相続税を物で納める場合とは

相続税の物納とは

相続する財産は、現金や預貯金といった金銭ばかりではありません。

不動産や有価証券など、すぐに換金できないものを相続した場合、その相続税は自己負担となります。

相続税は、原則として金銭で一括納付しなければなりませんが、納税に充てられる金銭がない場合は、その相続財産そのものを国に納めることで、納税に代えることができます。

これが、相続税の物納です。

物納の要件とは

物納を適用できる場面は限られます。

物納の要件は、「延納によっても納付することが難しい場合」です。

その「延納」とは、相続税を金銭で納税できない理由がある場合に限り、一括納付できない部分に限って年賦で納税することを認める制度になります。

そのため物納が認められるのは、年賦でも納付することが困難な部分についてのみです。

したがって、延納よりさらに限定的な制度になります。

個人の都合で選択できるものではないのです。

物納でいくら納税できる?

物納した財産は国が収納します。

相続税に充てられる金額(=「収納価格」)は、その財産の「相続税評価額」です。

ただし小規模宅地の特例が適用される財産については、特例適用後の評価額が収納価格になるので注意が必要となります。

物納の評価額が相続税額を超える時は?

原則として、相続税額を超える財産を物納に充てる「超過物納」はできません。

ただし、他に物納できる財産がないなどのやむを得ない理由がある場合は、超過納税が認められます。

この場合、超過分は国から還付されますが、この還付金は譲渡所得税(物を売却した時の利益にかかる税)の対象となります。

物納できる相続財産とは

物納できる財産の種類には制限があります。

そして、その財産の中でさらに順位があり、上位の財産から物納に充てなければなりません。物納できる財産の種類とその順位は、以下のとおりです。

第1順位 不動産、船舶、国債や地方債、上場株式など

第2順位 非上場株式など

第3順位 動産

ただし、もし物納できる財産が「管理処分不適格財産」に該当すると、その財産は物納することができません。

管理処分不適格財産とは、不動産の場合、

・担保権が設定されているもの

・権利の帰属について争いがあるもの

・耐用年数が経過し通常の使用ができないもの

・管理や処分を行うためにかかる費用が過大なもの

などが該当します。

 

株式の場合は、

・譲渡制限株式

・質権や担保権が設定されているもの

・権利の帰属について争いがあるもの

などとなります。

※管理処分不適格財産は、国税庁のサイトから確認することができます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm

物納劣後財産とは

物納劣後財産とは、他に物納できる財産がない場合に限り物納に充てることができる財産をいいます。

例えば

・地上権、永小作権、耕作目的の賃借権、地役権などが設定されている土地

・道路に2メートル以上接していない土地

・市街化区域以外に所在する土地

・事業を休止している法人の株式

などが物納劣後財産に該当します。換価しにくい状況がある財産を指定したものといえるでしょう。ただし、物納順位はあくまで財産の種類で決まります。
そのため、第1順位の物納劣財産と第2順位の物納劣財産でない財産がある時は、第1順位の物納劣後財産が優先されます。

※物納劣後財産も、国税庁のサイトから確認できます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm

生前贈与を受けた財産は物納できる?

物納できる財産は、相続税の課税対象となる財産です。

したがって、生前贈与加算(相続開始前3年に被相続人から贈与を受けた財産)は物納に充てることができます。

ただし、相続時精算課税制度の適用を受けた財産は、物納に充てることができません。

物納を行う方法

物納を行うには、「物納申請書」を相続税の申告期限までに提出することが必要です。

もし期限内の提出ができない時は、「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出することによって、3ヶ月間(最長1年間)提出期限を延長できます。

物納申請書の提出には、相続した現金の額や、相続財産のうち換価が容易な財産の金額、当面の生活や事業に必要な資金などを記載する「理由書」も作成する必要があります。

他にも物納財産の明細も作成しなければなりませんので、必要に応じて延長届出書の提出は検討しましょう。

特定物納制度とは

物納を行う方法には、延納の途中から物納に切り替える「特定物納制度」もあります。

特定物納制度は、申告期限から10年以内であることや、延納ができなくなった状況がある場合に認められる制度です。

物納のメリット・デメリット

物納した方がいいのか、あるいは売却した資金から納税したほうがいいのかは、ケースバイケースになります。

売却する場合に知っておかなければならないのが、売却益に所得税と住民税がかかることです。

売却収入の全額を納税に充てられるわけではありません。

また、小規模宅地の特例で評価減を受けた土地を物納に充てることも、避けたいところです。

物納に向いている財産は、相続税評価額が買取価格より高い場合です。

例えば、上場株式の相続税評価額は、被相続人が亡くなった当月・前月・前々月の終値の月平均のうち最も低い価格で決まります。

もし遺産分割協議が進む中で、その株価が下落した時は、物納によって相続税評価額で納税した方が有利なケースもあるのです。

まとめ 相続税の物納とは

以上の通り、物納は限られた場面で認められる措置です。

物納することのメリットもあるため、相続税の納付が困難な時は、本記事を参考に検討をしてみてください。

ご質問などあればお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。